『PiTaPa』立ち上げ当初の開発メンバーが集結。
全国展開に向けて、再び動き出した。
関西圏では誰もが知っている『PiTaPa』。かざすだけで電車やバスに乗れるポストペイ方式の非接触型IC決済サービスである。サービス開始当初は「スルッとKANSAI協議会」に加盟する私鉄などで導入されたが、その後ショッピングサービスやJR西日本『ICOCA』との相互利用が開始され、いっそう利便性が増していた。
Hayashiはかつて『PiTaPa』新規開発の立ち上げから5年間にわたって開発に携わった経験を持つ。その後、チームから離れて他のプロジェクトに関わるようになっていたが、再びチームに戻って来ることになった。それは、かつて手がけた『PiTaPa』の全国展開という動きが出てきたためである。
“戻った当初は、具体的な計画について未だ何も決まっていない状態でした。
さてこれからどう進めていくかと思案していたところ、状況が一変しました。”
Hayashi
プロジェクトリーダーに若手を大抜擢。
既存サービスの改定もプロジェクトと並行して進めていく。
若くしてプロジェクトリーダーに抜擢されたHasegawaは、「手応えの大きなプロジェクトになるぞ」と覚悟したという。
「全国相互利用については、当時、関西のマスコミでも大きく取り上げられ、それ以降、急激に忙しくなりました」。Hayashi、Hasegawaをはじめとする中心メンバーで具体的なシステム要件定義が始まり、報道から3カ月後には、他部署のメンバーやパートナー企業など含めて30名ほどのプロジェクト推進体制ができ上がっていた。
“これほど大きな案件でリーダーを務めるのは初めてだったので、正直言うと不安はありました。
しかし、多くの人が利用し、その成果を自分でも実生活で体験できる公共性の高いプロジェクトなので、『やり遂げるぞ!』という気持ちの方が強かったですね。”
Hasegawa
Amagaは、全国相互利用プロジェクトと同時並行で進んでいく『PiTaPa』の既存機能の改定を一手に引き受けていた。「利便性の向上のため、年に数十件もの機能改定を行っていました。私が既存機能への対応を確実に対処することで、他のメンバーが新たなスキーム構築に集中して取り組めるように努めていました。既存機能の改定が新たなスキームへ影響を及ぼすこともあり得ます。影響の有無をしっかり見極めつつ関係者と連携しながら進めていく必要がありました」。
公共性の高さゆえ、納品延期は許されない。
効率的な開発実現のために、チームが挑戦したこと。
プロジェクト推進における一番の留意点は、品質保持と厳格なスケジュール管理であった。交通システムという公共性の高さゆえ、トラブルや誤作動は決して許されない。そのため、構築したシステムの動作確認テストでは、非常に緻密かつ膨大なテストパターンを一つひとつ確認していく必要があり、とても時間のかかるものであった。とはいえ、期限は決して変えられない。
全国相互利用は「2013年春から利用開始!」と既に大々的に報道されている。
“品質にも十分配慮しながら効率的に開発ができるよう、システムの『アーキテクチャ』に工夫を凝らしました。”
Hayashi
当初は『PiTaPa』システムを相互利用ネットワークに直接接続しようと検討を進めていたが、開発期間がかかる上に運用上のリスクも高いことをHayashiは意見し、既に接続されているJR西日本のシステムを経由して他の交通事業者とデータ授受を行う方式が採用された。「もちろん『PiTaPa』利用者やJR西日本の『ICOCA』利用者に不都合が生じないよう、技術的に様々な工夫をしました。それによってとても効率的な開発が実現できたと思います」とHayashiは語る。
仕事を通じてメンバーの成長を期待。
陣頭指揮を執ったHayashiは、「このプロジェクトを成功に導くのはもちろんのこと、メンバー個々人の成長を促していくことも重要なミッションでした」。と言う。「マネージャーであった私だけでなく、他のメンバーにも率先してリーダーシップを発揮するように指導していました。各人が当事者意識を強く持ってプロジェクトに取り組むことで、個々の成長も実現できたと感じますし、組織としての戦力も最大化できたのではないかと思います」。